わかってもらうには、まず「足元」から。

福祉、まちづくり、ボランティア…。これまで、いろいろなことをやってきました。
どんなことをするときも、人に動いてもらうことは大変なことだ、と痛感してきました。
「どうやったら、自分の思いに共鳴し、人は行動してくれるのだろう」
その〝課題〟と〝答え〟を教えてくれたのが、私が20数年にわたって活動をしていた「三鷹市消防団」です。

私が消防団に入団したきっかけは、ごく単純なものでした。親父が消防団で活動していたからです。
「息子だから」。そう声をかけていただくままに入団。消防活動に入っていきました。
地域の消防団って、ものすごく結束が固いんです。団員のほとんどは普段は「ごくふつうの人」ですが、いざ火事となったら、自分の身を顧みず炎に立ち向かわなければならない。そんな背景もあり、毎年、消火活動のスピードや団の統制を審査するコンテスト「操法大会」に出場し、自主的に技能を競います。
そこでいい成績を収めるためには、短くても半年、毎日のように団の仲間たちと同じ釜のメシを食べ、同じ苦しさを味わいながら、大会優勝に向けて練習に練習を重ねなければならない。だから、自然と仲間同士の絆が深まります。

ちょうど入団から22年経ったころ、私は分団長を任されました。
そのとき、事件は起きました。大会に対する熱い思いがほとばしるあまり、団員間でケンカが起きてしまったんです。
話し合いはヒートアップするばかりで、とても収集はつかない。その場を取り繕って丸く収めようとしてもムリ。
「とりあえず、今日は寝よう」
翌日私は、団員が仕事に出かける前の早朝、自宅まで直接出向いて話し合いました。話して話して、少しずつ分かってもらっていきました。半年間、休むことなく続けました。
分団長から2年後、三鷹市消防団全体の団長をさせていただくことになりました。消防団とは、ひとつの巨大組織です。三鷹市には10の分団があり、1分団につき20人が所属しています。合計200人。この200人にとって、団長は「大きな大会のときにだけ来てえらそうにあいさつする人」としか映りません。でもそれでは思いは伝わらない。一人ひとりの意見を聞き、会話をしていくことが必要でした。

写真:「放水訓練」の様子

消防団って、日ごろなにをしているの?
その思いを一番強く持っているのが、家族です。
家族に理解してもらわなければ、毎日大会に向けての練習に出ていくことなどできません。
どうしたらいいかー。
「口でいくら言っても、きっと伝わらない。見ていただくのが一番だ」
そこで開催したのが、家族のための説明会。全団員の奥様やお子さんに会場に集まってもらって、食事をして、そして、操法大会の様子をスクリーンで見ていただきました。そして訴えました。「おれたち、これをやるんです!」
団員全員で、自分の家族に向けて、自筆の手紙を何通も書きました。「協力してください」「おかげさまで半年経ちました」「あと少しです」。そう記したメッセージカードを添えて、季節の果物といっしょに自宅に送り届けました。
家族が同じ思いになってくれたとき、人はやっと動くことができます。
なにかをするときは、最初に、家族の理解を得ることが重要。
このプロセスがあってこそ、人は動いてくれるのだと思います。

私は、これからも地域にこだわって、関わっていきたいんです。
大好きな人たちが住む場所だから。
好きだから、思いが強くなります。
今までの地域活動を元に、地域に貢献することが私の生き方です。